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【事例紹介】Di-Liteを導入した、社内全体のリテラシー向上の取り組み。年度内2,000人の3検定合格を目指す、みずほフィナンシャルグループのデジタル人材育成。

加速するデジタル化や少子高齢化、新型コロナウイルスの影響により産業全体に大きな変化が生じているなか、金融にも新たな形が求められている。

それらの変化に対応するべく、2019年度に「次世代金融への転換」と題し、5ヵ年経営計画を発表したみずほフィナンシャルグループ(以下みずほFG)。同計画によれば、新たな時代の顧客ニーズに対応し、顧客との新たなパートナーシップを構築していく『次世代金融への転換』の実現を目指すという。

鍵になるのがデジタル人材の育成だ。みずほFGではデジタル人材育成のためDi-Liteを導入し、Di-Liteの3検定(ITパスポート試験、G検定、データサイエンティスト検定)の受験をすべての社員に推奨している。

なぜこのタイミングでデジタル人材育成に力を入れるのか?どのような取り組みをしているのか?みずほFGの3名にインタビューを行った。

●プロフィール
みずほFG デジタルイノベーション部企画チーム
次長 西本 聡(にしもと さとし)

みずほFG 人材・組織開発部キャリアデザイン室教育チーム
次長 佐藤 千佳(さとう ちか)

みずほFG 人材・組織開発部キャリアデザイン室教育チーム
参事役 星子 武輝(ほしこ たけあき)

※肩書は取材時のものです

2022年はみずほFGにとってデジタル人材育成「ギアアップ」の年

なぜ今、デジタル人材育成の取り組みを加速させるのか?みずほFG デジタルイノベーション部企画チーム次長の西本聡氏はこう答えた。

ーー西本

「一番大きいのは危機感です。この2年ほど、新型コロナウイルスの影響でお客さまと物理的にお会いすることができなくなり、スマートフォンの普及も手伝って、お客さまと関係を作っていくためにはデジタルが不可欠になってきました。新しいお客さまとの関わり方を模索していく中で、デジタルに力を入れる必要性が高まってきたのが現状です。」

デジタルに強い人材の育成とともに、お客さまに寄り添うというみずほFGの強みを活かし、「金融そのものの価値」を越えて、非金融を含めた「金融を巡る新たな価値」を創造していきたいという。

また、みずほFGでは2016年春、(持株会社の下で、銀行・信託・証券を一体的に運営する〈みずほ〉の特徴と優位性を活かし、)お客さまのニーズに即した最高の金融サービスを迅速に提供していくためにカンパニー制を導入している。社員のスキルは人事部が責任を持つべき部分もある一方で、個々の部門が相対する顧客によっても求められる能力は変わってくるからだ。

カンパニー制への移行が契機となり、各カンパニーで求められるデジタル人材育成の取り組みは加速した一方で、各カンパニーに捉われない横串を通した体系的な育成もより高度化していく必要があったという。人材・組織開発部キャリアデザイン室教育チーム参事役の星子武輝氏はこう説明する。

ーー星子

「カンパニー制への移行も手伝い、2017年〜2018年頃からより社員のデジタルリテラシーを高めようと育成の取り組みは加速しました。当時は金融とテクノロジーをかけ合わせたフィンテックという言葉が流行っていたタイミングで、社員のリテラシー向上のために外部の有識者を招いた講演や、動画による学びを提供していましたが、いずれも体系立てて行えていた状況ではありませんでした。そこで、2019年度に設定した5ヶ年経営計画の中で、『次世代金融への転換』を掲げ『熱意と専門性』を持った人材の育成に言及することで、改めてデジタル人材育成に本腰を入れる運びとなりました。」

5ヶ年計画は現在4年目に入る。このタイミングでデジタル人材育成をギアアップするのは大きな意味を持つだろう。

Di-Lite習得に向け、3検定の受験を全社員に積極推奨。反応は上々で、自発的な勉強会も。

これまでデジタル人材育成の取り組みは行われてきたものの、アドホックな対応だったため、一部の先進的な技術に興味を持つ社員が動画での研修や講演で学んでいた状態だった。実際、内容も一般的なリテラシーレベルの内容からテクニカルな内容までが混在しており、『見る人しか見ない』状態だったという。

そんな状況もあり、人材・組織開発部キャリアデザイン室教育チーム次長の佐藤千佳氏は、「変化に対応できる人材とそうでない人材の差が開いてきた」と説明する。

ーー佐藤

「デジタルを導入するということは、これまでと大きく仕事のやり方を変える必要がある一方、人は変化に対して前向きになれない難しさもあります。真面目であればあるほど、今の仕事のやり方と自分を密接に結びつけてしまい、変化に対する難しさを感じてしまう。デジタルの波に乗れる人材とそうでない人材の差がかなり開いてきたことは、人事の問題意識として大きいものでした。」

では、今まさに力を入れようとしている、Di-Liteを活用した人材育成の内容はどのようなものだろうか。星子氏はこう説明する。

ーー星子

「足元では、すべての社員に向けて弊社内のラーニングプラットフォームにてデジタルの入門的な内容から専門的な内容まで、体系立てた動画配信をスタートしています。これらはあくまで座学なので、もっとも大事なのは、インプットした知識をお客様のための日頃の業務でどう使うかです。すべての社員に新しいものを作れとは言わないまでも、本部の専門人材と会話できるくらいのベースとなる知識は身につけて欲しいと思っており、Di-Liteが提供する内容はそのレベルにちょうどマッチしており、今回導入に至りました。」

具体的には、全社員に対してDi-Liteの3検定(ITパスポート、G検定、データサイエンス検定)の受験を積極「推奨」している。こうした内容をトップダウンで強く推奨すると、社員からの反発は往々にして起こりがちだ。しかし、社員の反応は上々だという。

ーー星子

「義務」でなく「推奨」であるのは、押し付けても逆効果だという考えからです。現在は、期間限定ではありますが3検定の受験に対して報奨金を出しています。結果として、自発的な検定の勉強会も開催されるなど、上がってきた声としては概ね好意的な声ばかりです。もともとこうしたリテラシーの必要性を感じていた社員がかなり多かった印象です。また動画研修や検定の先には会社が何を用意しているのかという声も聞かれます。意欲的な社員には体験型のワークショップなどを通じて、学んだことを使ってみる場の提供も検討しています。」

すべての検定に合格した社員に『DXマイスター』のような独自の称号を与えるような動きもある、と星子氏は続ける。すでにDi-Liteを新入社員研修に組み込んでおり、すべての社員にベースとして求める知識として、人材育成におけるKPIとしての運用も視野に入れているという。

全社のリテラシー向上をテコに、今後は専門人材育成の体系化にも着手。2022年度合格者2,000人を目指す

今後は全社員に向けたリテラシー教育のみならず、より専門的な知識を持った人材の育成についても取り組んでいくという。

ーー星子

「専門的な人材の育成は、今まさに設計中のフェーズです。みずほFGとして必要となる人材のタイプを類型化し、スキルと役割の観点からマッピングを進めています。IT部門など、すでに専門人材が存在する一部の部門ではすでに類型化されたりもしていますが、全社的に横軸をまずは揃えることを意識して設計しています。これができれば、いわゆる人材のポートフォリオ管理も可能になり、異動なども含めた計画的な人材育成が可能になるでしょう。」

ーー佐藤

「デジタルの活用も、根っこはやはりお客さまのためにどれだけビジネスに活かせるか、という部分が肝になります。弊社はカンパニー制を取っているので、個々の組織で必要な人材は明確化する必要がある一方、人事は裏方として、共通する部分はお互いに連携しあい、グループ全体を活性化させていきたいと考えています。」

みずほFGでは、2022年中にDi-Lite推奨の3試験の合格者2,000人の輩出を目指すという。星子氏は「チャレンジングな目標だが頑張りたい」と意気込みを述べる。DXに二の足を踏む企業が多い中、みずほFGのデジタル人材育成の取り組みは一石を投じるものになるだろう。同社の今後の動きにも注目だ。

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